電話 金欠 Nに頼る 西成8

ぷくが電話番号を書いていた。

躊躇しながらもとりあえず掛けてみた。

もしもし と言うと

「もしもし〜」

女性の声だった。ハスキーボイスだ。

「何やったん?」と聞くと

「関西の人なの?」

「今大阪」

ぷくは標準語だった。少し訛っている。

「そうなんだ〜ねえ?何で変なことばっかり書き込んでるの?笑っちゃうんだけど」

「いや、なんとなく…」

「なんとなく変な事を書き込む人なんだね〜ウケる」

 

そんな始まりだった。

少し自分に興味があるみたいだ。

声はハスキーで宇多田ヒカルに似ていた。本人にそれを伝えると喜んでいた。宇多田ヒカルジュディマリYUKIが好きで歌手を目指してるらしい。

 

「ぷく親衛隊てなんなん?」と聞くと

大笑いして

「いや、なんか勝手に持ち上げくる人が居てさ〜」

 

ぷくは福島県の一個下の女の子だった。

 

NSCにも行かずダラダラして

ぷくと電話ばかりしていた。凄くしょうもない話から真面目な話下ネタまで色々と。

楽しかったのだろう。

 

ぷくと電話をして1カ月立った後の電話料金を見て驚愕した。

68000円

何コレ?何これ百景。

 

貯金がやばくなってきた。バイトしなきゃ。タウンワークみたいなのを取ってきて探すと近くのコンビニで募集してるらしい。早速、コンビニに行くと履歴書を碌に見なくて即採用だった。

ラッキーだ。深夜勤務を言い渡された。

23時〜8時

 

23時前に行くと若い30くらいのオーナーは彼女らしき人を連れていて「まあ頼むよ〜

」といった感じだったが、NO2の店長を任されてる男は真面目タイプの人だった。

「これから一人で深夜入って貰うけど結構大変だからね」

 

コンビニの仕事は地元で深夜、大学生の友人が一人でやってるところに何回も遊びに行ってた事もあり楽勝だと思っていた。

田んぼの真ん中にあるコンビニで

夏になると外のガラスにビッシリとカメムシがへばりつく。

車通りもほぼ無し

友人は「暇過ぎてよく寝る」と言っていた。それを鵜呑みにしていた。

 

店長に仕事を教えて貰う。

めちゃくちゃやる事があるな、大変だ。

そこではポテチの袋の皺を伸ばして綺麗に整えるというのもやっていて、

「そこまでするんや…あれ?やばいかも」と思った。2時間くらいかけてみっちり詰め込まれて教えてもらって

 

店長が「じゃあ、一人で今日入ってみて。俺帰るから」

 

マジ?無理やろ。レジ以外わからないぞ。まあ良いっか。どうせ誰も深夜来ないやろ。と思ってると

 

田舎と違い結構頻繁にお客さんが来て

めちゃくちゃ大変だった。

客が居ない合間を縫って掃除、ガラスをダスキンでやったりポテチの袋を整えたり、在庫の数を書いたり

途中からもうポテチの袋は放棄した。

忙し過ぎてパニックになったまま、朝を迎えた。

これは無理やな。コンビニ舐めてた。

やめよ。

店長に電話をすると「何考えてんねん1日で!仕事なめ過ぎやろ!大体な…」

 

ワーワー言われてすみませんすみませんと繰り返し電話の前でペコペコしていた。

コンビニはもうやめよ。

 

そういえばNは何のバイトしてるんやろ?

同じマンションに住んでるN 。

彼も当然バイトしてるだろう。

Nに電話すると、「家をおるから来て話しする?」と言った。

相変わらず気さくな人だ。

「行くわー」と言ってすぐ行くとピンポン鳴らしても出てこない。

しばらくするとガチャとドアが開き

裸のN が現れた。

「シャワー浴びててんごめんな、早かったな」と言った。

裸のままのNが話しかけてくる。

 

N 「で、なんやったん?」

「あ、服着たら?」

N 「ちょっと冷ましてんねん」

「ええ身体やな」と言うと

N 「せやねん。ええ身体やねん」

と言ってご満悦な感じで

N 「そろそろええかな」と言って

紫のTシャツを着た。

一つの儀式をやり終えた気がした。

 

「あの〜バイト探してんねんけどN君何のバイトしてんの?」

N 「あーちょっと歩いてすぐの牛丼屋やで」

「え!あそこ?」

 

何回か行った事があったけどNを見かけた事がなかった。

 

N 「深夜しか入ってないからなー。深夜は時給が高いねん。今人足らんから良かったらヒラ3君店長に言うとくわ」

「ありがとう頼むわ」

 

Nに頼んで新しいバイト先が決まった。

優しい人と同じマンションで良かった。

 

続く