5年後 4

放送作家学校に入るための履歴書を書いた。

相変わらず汚い字だな…

丁寧に書いたつもりなのだが…

封筒に入れ郵送した。

 

約1週間後くらいに合格通知がきた。

よし、とりあえず行く先が決まった。

しかし、石が疼く…早く出てくれないかな…

痛みが激しくなると座薬を挿し、無くなると病院にまた薬を貰いにいくという事を繰り返していた。

一生出なかったら、どうしよう…

無限地獄…

こんな状態で大丈夫なのかしら

身なりも整えないとな…

伸び切った髭を剃り、めちゃくちゃ散らかったゴミ部屋を掃除した。

西成という地区は、自分みたいなズボラ人間に取ってみたらもの凄く居心地

の良い場所だ。

他人の事を詮索する人が少ない。

パジャマみたいな格好で昼間出ても平気。

最高の楽園だ。

反面、ダラダラした不規則な生活になりがちだったりもする。

Nなんかは部屋も綺麗で、規則正しく生活してるように見えた。

ゆえに、これは地域がというより

自分本来の性質と一致しただけだろう。

決して西成のせいではない。

 

ぷくに言われた言葉で思い出したのが、

何ヶ月か一緒に住み始めて二人でスーパーに買い物に行った帰り道の事。

何やらぷくが浮かない顔してため息をついてる。

「どうしたん?」と聞くと

ぷく「いや、なんでもない」

「何なん?」

ぷく「うーん、とても言いにくい事なんだけどね…」

「うん」

ぷく「〇〇ちゃんと居ると楽しいけど、凄く自分が"ダサく"なった気がするの」

「マジか」

「マジ」と言ってぷくは笑った。

 

全然分からなかった。

来た時と、そんなに服装とか変わってないように見えるけどな…

多分、服装とかの事ではないのだろう。

 

NSCを卒業してからバイトだけで生活し、"何もやろうとしていない"自分に対して感じた事なのだろう。

 

他にもこういう事があった。

ぷくがスーパーでのバイトに慣れてきて友達も出来た頃、

迎えに行くと今までは、はしゃぐような感じで走ってきたのに

友達と一緒に迎えに来た自分を無視するような感じで歩いていった事があった。

焦って追いかけていくと結局、「ネタだよ〜」とか言って笑っていたが、

今思うと不甲斐ない自分に対して

「もっとしっかりしろ!」というメッセージという捉え方もできる。

 

そんな事を思い出しながら

 

覚悟を決めて放送作家学校に行こうと思った。

 

続く