5年後6

しょっぱなから躓いたなあと落ち込んだ。

 

初日から"先生"に激怒されて評価は最悪だろう。

眠れなくなった。

早く寝ないと明日はバイトだ。

 

既に、牛丼屋はやめて天王寺の輸入物を専門に扱うスーパーでバイトをしていた。

牛丼屋をやめた理由は

280円セールというのが当時あり、

クソ忙しい中、深夜二人きりで一週間回す事になり、(Nはその少し前に要領良くやめていた)めちゃくちゃ頭フル回転させて効率良くやっても客が次から次へと雪崩のようにやってきて、心身共にフル稼働して燃え尽きたからだ。

 

もういいや牛丼屋はとなった。

 

天王寺のスーパーは正直楽だった。

女の子もたくさんいたし楽しくて楽園みたいな感じだ。

チーズなんかも少しは詳しくなった。

ただしばらく経つとそこでも、色々いざこざがあるのだが…

まあそれはまたの機会に話そう。

 

とりあえず眠れない。

 

眠れない時は色々考えてしまう。

公園にでも行ってタバコでも吸おうかな。

 

そういえばぷくと夜の公園に行ったなあと思い出した。

一緒に住んでた頃、ぷくが寂しいから何か飼いたいと言った。

「こんな狭い部屋で何飼うの?」

ぷく「たしかにそうだね〜うーんハムスターとか?」

 

ハムスターを飼う事になった。

白いからシロ

シロは可愛かった。

ぷくによく懐いていた。

 

けれど飼い始めて二ヵ月くらい経った

夜、シロは動かなくなった。

 

こんなにすぐ死ぬのかと思った。

悲しかった。

 

ぷくは「公園に埋めに行こう」

と言った。

 

小さいスコップを持って二人で夜の公園まで歩いた。

うちから5分くらいだ。

公園にはでかい木があった。

その根元にシロを埋めた。

合掌。

 

公園にブランコがあった。

 

なんとなく二人でブランコに座った。

 

そこでなんとなく色々話した。

くだらない話や、お互いのバイトの話

笑い話や、友達の話

ぷくと長い話をしたのは久しぶりだった。

 

息が詰まるような狭い部屋で

お互いにあまり喋らなくなっていた。

話しても、「あー」とか「うん」とかで

喧嘩も頻繁に起こっていた。

喧嘩するとよくこの公園に来てブランコに揺られながらタバコを吸っていた。

 

ぷくの笑い声を久しぶりに聞いた気がする。俺も笑った。

まるで、電話で話してた時みたいに。

 

話の終わりにぷくが真顔になり言った。

「あのね、一度帰ろうと思うの」

 

 

 

そんな事を思い出しているといつのまにか俺は寝てしまっていた。

 

次の日バイトが終わると

放送作家学校の「課題」に取り掛かった。

先生が毎授業終わりに宿題を出すのだ。

今回の課題は

「面白いTシャツを着てくる」

だった。大喜利みたいだな。

うーむ何にしようか?

 

考えた。

白いTシャツにクロムハーツと小さく書くのはどうだろう?

うーん難しい…

あっ!と閃いた。

 

「リュックサック背負ってるみたいなTシャツ」にしよう!

リュックサック背負ってる時

前から見るとベルトがTシャツの脇に見える。

ベルトに見えるようにTシャツに黒いガムテープを脇二箇所に貼り付けた。

 

これで良し!

 

ウケたらいいなあ

 

続く