スーパー銭湯

スーパー銭湯に最近よく行く。

行くのは大体休日の夕方だ。

ゆっくりと歩いて40分くらいの距離をウォーキングも兼ねて歩いていく。

35分くらい歩くと木造の大きな平家建ての建物が見えてくる。

その平家を囲うようにして田んぼがありそれがお堀に見えて武家屋敷にも見える厳かさすら感じる建物。ここに今から自分が入れるなんて何か誇らしい気持ちになる。

館内に入ると靴をロッカーに入れ100円を入れ鍵を回す。

床は板張りのフローリングで歩いてて気持ちが良いのでワクワク感が加速する。

そして、館内にあるマッサージ屋を横目に見ながら券売機に向かう。

 

券を買ったら受付の人に渡しカメラ体温計で平熱を確認して男湯と書かれた青の暖簾を潜る。

さあ着替えだ、これには少しコツが要る。

後でお金が返ってくるタイプのコインロッカーに"先に"100円をセット"しておくのだ。

こうする事により着替えた後に鞄にさっき閉まった財布から硬貨を取り出さなくて良い。通い慣れた男の職人技、匠。

そして、いよいよ銭湯内部に突入していく。武器はフェイスタオル一丁だ。

かけ湯で清め、そして早く湯船に浸かりたい気持ちを抑えながら身体を洗う。

身体を洗うと"前菜"として薬草サウナに向かう。

サウナにはもう一つ普通のがあって二種類あるのだが、何となく薬草のが得した気分になるのでそっちを選んでいる。

中にある椅子に腰を掛け12分時計に目をやり12分入ろうと自分に誓い備え付けのテレビを見る。

大して興味が無くても絶対見る、これは鉄則だ。テレビを見ない12分はあまりにも長い。

無事に12分入ると達成感で心が満たされる、ガッツポーズしたい気持ちを抑え身体を拭いてから水風呂に入る。

つい先日まで水風呂に入れなかったが、水風呂経験者の「水風呂は勢い」というアドバイスを信じて勢いでいったらイケたのだ。ありがとう水風呂先輩。

で、次に向かうは"メインディッシュ"の露天風呂だ。

露天風呂は3種、薬湯、炭酸湯、マイクロバブル風呂とあってそれぞれ効能が違う風呂達を堪能する。

そして身体が温まった所で露天に備え付けのデッキチェアに横たわる。

視線の先には空が見える。

極上の瞬間だ。来て良かったと心から思える。

 

それらを繰り返しながら今度は最後の仕上げの"デザート"として内風呂に向かう。

ジェットバスが中でもお気に入りでこれはマッサージ効果もある。

足の指の隙間にジェットを合わせると未知の快感に襲われる。

 

そしてシャワーで身体を洗い更衣室の冷水機で水を飲む、この水がまた美味いし真夏の部活の時に我先に群がる光景も思い出す。扇風機に当たり身体の火照りを解消し身体を拭き着替えて髪を乾かしてまた暖簾を潜る。

そして館内の椅子に座って暫くボーっとする。

 

で、最近気づいた事がある。

 

スーパー銭湯

「なぜ、こんなに居心地が良いのだろう?」

 

この答えが最近わかったのだ。

 

まず、居心地が良い理由として匂いは挙がる。

人々の石鹸やシャンプーの匂いが館内に充満している。

もう一つは館内に居る人達の声がみんな小さい事だろう。

ガヤガヤしてたり大きな声を荒げたり喧嘩したりを見かけた事がない。

なぜか?

 

多分、"みんな気持ち良い"からだろう。

 

気持ちが良いって事は良い事だと思う。

居心地の良さは気持ちが良い人々の集まりによって形成されていたのだ。

もし天国があるとしたらスーパー銭湯のような場所なんだと思う。

 

そして、最後の仕上げに無重力マッサージチェアに座り濃いカルピスを買って後ろ髪を引かれながら外に出る。

辺りはもう暗い。

田舎の夜道を歩いて帰る。

虫の声と夜風がすこぶる気持ち良い。

帰り道は少し感傷的な気分になったりもする。

昔の恋人とスーパー銭湯行った事を思い出す。

待ち合わせの時間を合わせて椅子に座ってると決まって少し遅れて来る彼女の笑顔。

気持ちが良い時に浮かぶ思い出は大抵、良い時の方だ。

 

そして家路に着く、

また絶対行くと誓いながら