楽しい パチンコ カラオケ 西成13

一緒に住む?

え?無理やろ!と思った。

いや、でもそれも悪くないかも…住みたくなってきた。え?一緒に住むのか?

いや、二人は狭いよ!この部屋!

いや、でもでも…

 

完全に混乱していた。

他人と一緒に住むってどんな感じなんだろう?

全くわからない。

 

NSCにはネタは作ってないけれどたまに行っていた。

頭がぷくの事でいっぱいになった状態でネタを見た。

みんなのネタが今までよりも更に面白く感じる。

 

帰りに仲間達と難波駅の地下にあるなんなんタウンの喫茶店で話した。

楽しい。

今までよりも楽しく感じる。

 

バイト休みの日にOさんとパチンコに行った。

O「ヒラ3君、パチンコっていうのは〜"ピンチチャンスチャンスピンチ"なんだよ」

ピンチで終わるのかよ?

意味わからないけど面白い。

 

ぷくは凄いなあと思った。

逆の立場でぷくと一緒に福島に住むのかと言われれば

「少し時間下さい」と言うだろう。

言い訳の時間が必要だ。

 

自分は言い訳だらけの人生。

 

彼女は違った。自分の意志に従って行動を起こせる彼女を心底尊敬していた。彼女は強い人だ。

その事を彼女に伝えた事がある。

すると「ううん、違うよ都会に住みたかったから適当な人を探してただけw」

と言って笑った。

 

月日が経ち

 

ぷくが大荷物を抱えてやってきた。

「今日からお世話になります」

深々とお辞儀をされた。

 

ぷくとの日々がこうして始まった。

 

バイトに行く時、寂しげな表情で「早く帰ってきて」

と言われ「時間決まってるから…」と言い後ろ髪を引かれる思いでバイトに行ってた。

バイトが終わり店のドアを開けると

ぷくが迎えに来てくれていた。

 

Nも一緒だったので

Nに「あれ、あれれ〜〜ヒラ3君彼女おったんや〜」と冷やかされた。

 

三人で一緒に帰った。

三重と岡山と福島の人が大阪の街を朝方歩いている。

朝日がいつもより眩しい。不思議だ。

 

その内ぷくはNとも仲良くなって

三人でカラオケ屋に行った。

 

Nが得意気にスピッツを歌いだした。

結構上手いなあと思い、二人で拍手した。

「上手いやん」と言うと

Nは「上手いねん」といつもの調子

 

次にぷくが淡々とした感じでaikoの「ボーイフレンド」を歌い出した。

 

度肝抜かれた。

上手過ぎる!!!

歌が本当に上手い人の声ってこんな感じなんだと感動してたら

Nも同じような事を思ったらしく目をまん丸に見開いて興奮しながら手をかざし

「俺が今まで聞いた歌の中で五本の指に入る」と叫んだ。

 

そして、自分の番

どうしよう歌知らない

 

二人がニヤニヤしながら

「ヒラ3君が好きな歌歌えば良いねん」

「そうよヒラ3が好きな歌歌えば良いのよ」

励ましてくれた。

うーん

 

じゃあチャゲアスの「僕はこの目で見て嘘をつく」を入れた。

小学生の頃、初めて買ったシングルCDだ。

 

その瞬間から二人が爆笑している。

 

芸人を目指してる人

歌手を目指してる人

 

二人に何にもしていない自分が笑われている。

 

幸せな時間だった。

 

続く

 

 

 

 

色彩のある街 OCAT 西成12

バイトにも慣れてきた。

声も大きく出せるようになってきた。

それは多分バイトが楽しかったからだと思う。

チェーン店の安心ポイントは何より、

マニュアルが完備されてるところだ。

それに従ってさえいれば自分みたいな馬鹿でも大きく道を外す事はない。

そして心強いバイト仲間達が居る。

NやOさんが笑わせてくれる。

賄いもある。

言うこと無しだった。

バイトが終わって朝方、店を出ると

色彩がそこにはあった。

 

しかし、ぷくが来るのか…

どうしよう

来たとしてどこに連れて行けば良いのだろう?

meetsみたいな本でも買おうかな…

女の子との過ごし方が全くわからない。

あの散らかった部屋に泊まるのか?

とりあえずピカピカにしておかないとな…

服装はどうしよう…

 

考え出したらキリが無かった。

とりあえずまあなんとかなるやろ。

 

来る前にぷくと電話をした。

ぷく「二泊三日で高速バス予約したよ〜難波のOCATってとこに着くらしい」

"二泊三日"

ぷく「ヒラ3ちゃんの家に泊まらせてね」

「狭いけど良いの?」

ぷく「全然いいよ〜」

 

翌日から大掃除が始まった。

不思議なもので誰かが来ると分かると身体が動く。

 

ぷくが来る日、早朝だった。

1時間も早く難波OCATで待っていた。

ぷく「どんな格好してるの??」

「一番ダサい奴を見つけてくれたら良いよ」

ぷく「一番ダサい奴だね〜わかった」

実際ダサかった。今もだけど。

 

緊張しすぎてとりあえず朝マック朝マック二つも食べてた。

食べた気がしないし全然味がしなかったからだ。

食べた後、ヤバイ!朝マックの口臭が!とか思って、トイレでうがい30回くらいした。

 

バスが到着した。

なんとなくびびって柱に隠れた。

ぞろぞろと降りてきた。

ぷくだ!見た瞬間わかった。

 

キョロキョロしてる。

行かなくては、、、

ぷくの方に向かった。

ぷくと目が合った。

ぷく「ヒラ3ちゃん?」

「うん」

ぷく「大変だったよ〜バス」

ぷくは無表情だった。

 

「お腹減った?どっかお店行く?」

ぷく「ううん、バスで食べたし疲れたから家で休みたい」

「あ、わかった」

無表情で無言のぷくと二人で、地下鉄に乗った。

凄く重そうな荷物があったので

「持つわ」

ぷく「ありがと」

これくらいの会話しかしていない。

嫌われたのかな。まあダサいから仕方ない。後は迷惑かけないようにだけしよう。

 

部屋に着いた。

部屋のドアを開けてドアを閉めた途端、

ぷくが抱きついてきた。

 

???

 

ぷく「ダサいからじゃないよ!すぐわかったんだよあの人だって!直感!まあダサいけどね〜〜笑」

抱きついてきてぷくは笑いだした。

 

ぷく「バスで寝てないから眠たいんだよね〜布団勝手に敷くね〜〜横来て」

シングル布団なので少しはみ出しながら横に寝た。

身体半分は床にある。

 

するとまた抱きついてきた。

 

不思議とエロいとか興奮とかあんまりなくてただただくすぐったい。

女性の身体の柔らかさにもビックリした。

 

色々話したりイチャついたりご飯食べたりしてる内にあっという間に3日経ち、ぷくが帰る日が来た。

 

OCATまで送りに行く。

ぷくが泣いている。

バスの扉が開いた。

 

ぷく「一緒に住むって決めたから」

え?

ぷく「バイバーイ♪」

西成に着くと色彩のある街がそこにはあった。

 

続く

手紙 NSC Sの家 西成11

数日後、ぷくから手紙が届いた。

まずビックリしたのが字の綺麗さ。

そして内容も素晴らしかった。

手紙待ってるね。と書かれていた。

プリクラも入っていて

ぷく!という感じだった。

 

ヤバイ。女の子に手紙なんか書いた事ない。

 

ぷく「手紙届いた?」

「うん」

ぷく「良かった〜プリクラも急いで撮ったんだよ友達にお願いして」

「見たよ」

ぷく「〇〇ちゃん(ヒラ3)からの手紙楽しみに待ってるね〜」

 

どうしよう…

 

悩んでても仕方ないのでNSCに行った。

四ツ橋線に乗り大国町で乗り換え

御堂筋線で難波まで行く。

難波についたら5分くらい歩いて教室に着く。

みんなのネタを見る

N岡くんとK戸くんのコンビ上達してるな〜PえとN川のコンビも面白い。SもI君もNもピンネタで爆笑した。

自分が悩んでるのはネタではなく"女の子への手紙"の事。

 

授業終わりにSに「家くる?」と言われSの家に寄った。

 

Sの家は生野区にあった。

部屋にはベッドしか置いていない。

綾波レイみたいな部屋だな。

なんというストイックな奴なんだ。

 

ネタが浮かばないという話を切り出した。

Sはガバガバタバコを吸っていた。

 

S「ネタやらんの?もったいないで」

高く買ってくれてたのかな?

「まじで?」

と言ったら

S「いや、違うねんヒラ3君の事じゃなくてお金払ったやろ学校?」

「うん」

S「そしたらもったいないやん。やりたい事をやりまくっていい場所を買ったのにって事」

「せやな」

S「適当に思いついた事でもドンドン試したらええねん。完成してなくても良いねん。ナルシストやねんな〜ヒラ3君は」

ナルシスト…ナルシストなのかもしれない

「たしかに」

そう言って別れた。

 

Sの言葉に触発されて、パワーがみなぎってきた。

ネタじゃなくて

ぷくへの手紙へのパワーだ。

 

汚くても良い、文章めちゃくちゃでも気持ちさえこもってれば良い。

ダイソーでレターセットを買って帰り

 

部屋で思いのたけをぷくにぶちまけた。

 

そして夜中にポストに投函して寝た。

よっしゃあ!という感じで。

 

数日後、ぷくから電話があった。

「手紙着いた〜?」と聞くと

ぷく「着いたけどさ〜中身何にもないんだけど 笑」

「は?」と言って部屋を見ると、細かな字で書き殴った紙が片隅にあった。

ぷく「お笑い目指してるって言ってたからネタなのかな〜って。妹と話し合ってたんだよ」

「ネタやねん」

全然ネタじゃない…

 

手紙を今度はちゃんと入れてぷくに送った。

 

ぷく「やっと手紙きたよ〜文字小さくて読めなかったから虫メガネ使ってよんでたの。ありがとうね」

 

明らかに"汚い".字だったのに"小さい"に切り替えてしかも、"虫メガネ"という

笑いに変えようとしてくれた。

 

ありがとう。

 

ぷく「言いたい事も伝わってきたよ。そんなに私の事好きなんだね。

そういえば最近、タトゥー彫ったんだよ」

「タトゥー?」

ぷく「狼のタトゥー入れたの。強く生きるって。だから私、バスの予約したよ。来週行くから」

 

来週???

 

 

続く

 

ダンス 牛丼屋 江坂 西成10

ぷくとの電話を繰り返してる内に

標準語か福島弁かはわからないが言葉が伝染ってきた。

「だよねー?って言った今?笑」

「言って・・・ないよ、いや、ないやん」

「誤魔化そうとしなくていいよ 笑」

 

影響受けやすいな自分は、とその時、気がついた。

多分、アメリカに住んだらすぐ英語ペラペラになるんじゃないのかなあとか思ったりした。

 

次の日NSCに久しぶりに行くとダンスだ。

NSCにはダンスの授業もあった。

久しぶりにジャージを着て一生懸命クネクネしていると鏡越しにクスクスしてる奴が居る。Nだ。

終わった後、Nに「ヒラ3君のダンスおもろいわ」と言われた。

自分的には一生懸命やってるだけなのだが…

N 「そういえば今日の夜から、バイトやんな?俺とO崎さんとヒラ3君の三人でやるから頼むわ」

 

今日からバイトだ

23〜8時 1時間休憩のみっちり8時間

生活リズム変わるな

牛丼屋は忙しいイメージがある。

しかしコンビニの1人を経験したから大丈夫だろう。

3人でしかも頼もしいNも居る。

 

ぷくとは夜中まで電話してる事が多かったので報告した

「今日から夜中バイト入る事になったわ」

「何のバイト?風俗?」

「牛丼屋。」

「ぷひゃあああ、笑えるwww牛丼作るの??似合ってないよ」

 

会った事ないし、顔も知らないのに似合ってないとは???

 

少し早めにバイトに行くとOさんが居た。

O「おーヒラ3君"おはよう"!!!」

"業界人"の挨拶だな。

「おはようございます!」

O「今日からよろしくねー。でさー早速だけど…」

「はい」

早速、仕事かな?身構えた。

O「今度、江坂で舞台があるんよ。これチラシあげる」

チラシを見るとOさんの名前が確かにある。

O「俺"主演"だから良かったら見に来てよ〜1000円だけど、俺の名前出したら500円になるから」

「わかりました。行けたら行きます」

 

Nが遅れて来た、何かニヤニヤしてる。

「ヒラ3君とOさん並ぶとおもろいな 笑」

O「どういう事よNちゃん」

N 「いや、不思議やなあと思いまして 笑」

O「なるほど、全員スターになるって事ね?いずれ伝説になるよ」

N 「はあ???」

みんな笑った。

 

バイトが始まった。

二人から色々と教えてもらい、まずはカウンター係

 

「いらっしゃいませ!ご注文よろしいでしょうか?」

「並一丁!」

「並つゆだくで一丁!」

「並つゆぬきで一丁!」

「A定一丁!」

 

とにかく「一丁一丁」言いまくっていた。

仕事振りを見るとNはやはり優秀で、一回の行動で二つ以上の事を涼しい顔でこなしてるように思える。無駄がない。

しかしあまり元気がないのがどうかな?と思ってたが、そこはOさんの超絶なパワーに遠慮していたのだろう。

 

朝方のOさんのテンションは異常だった。

O「いらっしゃいませ!!!!!!」

俺とN はクスクス笑っていた。

 

この二人とならやっていけそうだ。

頼もし過ぎる。しかも楽しい。

ついてるなと思った。

 

朝の帰り道、Nと一緒

N 「そういえばヒラ3君、Oさんの舞台聞いた?江坂であるらしい」

「うん」

N 「おれ、あんま行きたないねんけどヒラ3君行くんなら一緒に行こや」

「いこいこ」

 

帰って寝てるとぷくから電話があった。

時間を見ると夜21時だ。

初日バイトの疲れか、めちゃくちゃ寝てたようだ。

 

「バイトどうだった?」

「まあまあかな」

「今日も?」

「うん」

「大変だねー頑張ってね〜〜」

「ほい」

 

何日かバイトをこなし少しは慣れてきた。

その牛丼屋には賄いシステムというのがあり、4時間働くと牛丼並を一杯食べる事が出来る。

8時間働くと牛丼二杯。

これはデカイなと思った。

食費がめちゃくちゃ浮く。

しかし、牛丼連続食いも最初だけでそのうち"飽き"との闘いになる、結局飽きに負け、他の定食屋で無駄な出費をしていた。

 

Oさんの演劇の日

Nと二人で地下鉄御堂筋線で江坂まで行った。

二人とも江坂は初めてで

降りた時、街過ぎて感動した。

色味がある。

N 「江坂って都会やな。ハンズあるわ」

「ハンズあるな」

N 「見てヒラ3君!スタバあるわ」

「スタバあるな」

完全に田舎のバカ兄弟の会話だ。

 

Oさんの演劇を二人で見た。

"主演"と聞いてたのに全然出てこなくて、途中の方で物語と全く無関係な犬みたいな格好をして出てきて

「ワン」と一回吠えて掃けていった。

 

カーテンコールで、犬のOさんが嫌がるヒロインの女の子を無理矢理、お姫様だっこし、「俺が主演のO」と叫んだ。

 

よくわからない舞台を見て

Nとせっかく江坂まで来たのだからという事で

お洒落なカフェに寄った。

 

俺は、なぜだかわからないけれどNに対して「俺はこんなとこ何回も入った事ある」って思われたかった。

"あなたみたいな田舎者"とは違うと。

ええかっこして「カプチーノ」を頼んだ。

カプチーノってなんだろ?と思いながら

Nがニヤニヤしながら「やるやん」

と言った。

カプチーノを見た瞬間、ビックリして

「泡だらけやん」と叫んでしまった。

Nは爆笑していた。

 

その日は休みだったので

ぷくと電話した。

 

ぷく「ねーなんか好きになってきたんだけど」

「は?」

ぷく「近いうち大阪行くから待ってて」

 

 

続く

 

 

 

I君 バイト開始 Oさん 西成9

N 「そういえばさーヒラ3君、最近NSC来てないよな?なんでなん?」

「うん、、ネタが思いつかんのよ」

ネタが浮かばないし、女の子との電話に夢中になって毎月68000円くらい使ってると"正確"には言えなかった。

N 「そっかーそういえばこの前、I君めっちゃ面白かったよ。」

「まじ?見たかった〜」

I君は大学を卒業してNSCに入ってきたみんなより少し歳上のピンでやってる人だ。兵庫の実家から通っている。

面接の時に衝撃を受けた。

 

"タオルの人"の後にI君は手を挙げた。

面接官「他に質問ある人居ます?はい君どうぞ」

I君「〇〇新聞の記事を読んだのですが、この会社って特定の芸人を優遇してるって本当ですか?」

面接官「いや、その記事読んでないからちょっとわからないけど」

I君「そんな事が許されるのはこの世でウッチャンと僕だけですよ!」

面接官「いや、しらんがな」

 

I君のネタはぬいぐるみを二つ手に持ち

「ピッチー&ジェイムス」と名付け、

風呂場で爺さんがぬいぐるみ同士を散々語らせて意気投合した後

片方のぬいぐるみがもう片方のぬいぐるみに風呂桶を被せてから風呂に沈めるというものだった。

 

めちゃくちゃ面白い人だ。

 

I君の新ネタ見たいなあ。見に行きたい。

 

N「そういえば今度の選抜俺選ばれたわ。」

「まじ?凄いやんおめでとう」

 

ドンドン置いていかれる。

自分は何をしてるんだろう。

 

面接の日、Nが話してくれたおかげで

店長が好意的に迎えてくれ、即採用になった。

店長「ヒラ3君わからない事あったらOに聞いてな?」

O?

店長「おーいO!ちょっとこっちきて」

Oさんが来た。

 

Oさんは劇団に所属していた。

ジェームズディーンを崇拝しており

家の散らかった4畳半にはジェームズディーンの絵がかけられていた。

山口県の島出身で

自分の島の事を「あれは盗賊の島だからね」とニコニコしながら言っていた。

 

O「ヒラ3君ていうの?N君から聞いてるよ!よろしくね!!!」

声が大きいな

O「じゃあ〜早速発声練習いこう。いらっしゃいませー!!!」

いらっしゃいませー

O「声小さいなそれでも芸人目指してるの?もう一回いくよー」

久しく発声練習もしてなかったな。

たった1カ月前怒られた事が遠い昔のようだ。

 

明日NSCに行こう。

 

 

続く

 

 

楽しい楽しくない

デート終えたカップルの帰り道

 

A「楽しかったな〜イルミネーションめちゃくちゃ綺麗だったよな最高」

 

B「ああ…そうだね…」

 

A「ん?あれ楽しくなかった?笑ってたじゃん」

 

B「え…いや楽しかったよ」

 

A「なんか暗いじゃん。ははーん。そっか俺としばらく会えなくなると思って寂しくなったのか〜〜笑」

 

B「いや、そんなんじゃなくて」

 

A「"そんなん"?」

 

B「A君さ〜めちゃくちゃ楽しそうだったよね今日。点数でいうといくつ?」

 

A「点数?そら100でしょ!」

 

B「は〜やっぱり…私75くらいだったの…楽しさ点数」

 

A「まあまあ高いじゃんマイナスじゃないなら良いじゃん楽しかったんなら」

 

B「でも、A君より25点楽しくなかったとも言えるよね?私も100が良かったの。でも無理だった…」

 

A「なんで?」

 

B「あなたが先に100に到達したからよ。あまりに横でニコニコはしゃいで嬉しそうで…途中からなんだこいつ私より楽しそうにしやがってと思った正直」

 

A「は?おまえも100になったら良いじゃん二人で100なら最高じゃん」

 

B「いや、それは理想だけどありえないの。私が100になったら多分A君は75くらいになるわ。なると思う!だから良いの私は75で。」

 

A「なんだよ。面倒くさいな〜何か楽しくなくなってきたわ…」

 

B「(嬉しそうに)え!点数いくつ?」

 

A「何急に目輝かせてんだよ…75くらいになったわ…おまえが面倒くさい事言うからだぞ…」

 

B「やったー楽しくなってきた〜バイバーイ♪」

 

A「………」

 

 

 

電話 金欠 Nに頼る 西成8

ぷくが電話番号を書いていた。

躊躇しながらもとりあえず掛けてみた。

もしもし と言うと

「もしもし〜」

女性の声だった。ハスキーボイスだ。

「何やったん?」と聞くと

「関西の人なの?」

「今大阪」

ぷくは標準語だった。少し訛っている。

「そうなんだ〜ねえ?何で変なことばっかり書き込んでるの?笑っちゃうんだけど」

「いや、なんとなく…」

「なんとなく変な事を書き込む人なんだね〜ウケる」

 

そんな始まりだった。

少し自分に興味があるみたいだ。

声はハスキーで宇多田ヒカルに似ていた。本人にそれを伝えると喜んでいた。宇多田ヒカルジュディマリYUKIが好きで歌手を目指してるらしい。

 

「ぷく親衛隊てなんなん?」と聞くと

大笑いして

「いや、なんか勝手に持ち上げくる人が居てさ〜」

 

ぷくは福島県の一個下の女の子だった。

 

NSCにも行かずダラダラして

ぷくと電話ばかりしていた。凄くしょうもない話から真面目な話下ネタまで色々と。

楽しかったのだろう。

 

ぷくと電話をして1カ月立った後の電話料金を見て驚愕した。

68000円

何コレ?何これ百景。

 

貯金がやばくなってきた。バイトしなきゃ。タウンワークみたいなのを取ってきて探すと近くのコンビニで募集してるらしい。早速、コンビニに行くと履歴書を碌に見なくて即採用だった。

ラッキーだ。深夜勤務を言い渡された。

23時〜8時

 

23時前に行くと若い30くらいのオーナーは彼女らしき人を連れていて「まあ頼むよ〜

」といった感じだったが、NO2の店長を任されてる男は真面目タイプの人だった。

「これから一人で深夜入って貰うけど結構大変だからね」

 

コンビニの仕事は地元で深夜、大学生の友人が一人でやってるところに何回も遊びに行ってた事もあり楽勝だと思っていた。

田んぼの真ん中にあるコンビニで

夏になると外のガラスにビッシリとカメムシがへばりつく。

車通りもほぼ無し

友人は「暇過ぎてよく寝る」と言っていた。それを鵜呑みにしていた。

 

店長に仕事を教えて貰う。

めちゃくちゃやる事があるな、大変だ。

そこではポテチの袋の皺を伸ばして綺麗に整えるというのもやっていて、

「そこまでするんや…あれ?やばいかも」と思った。2時間くらいかけてみっちり詰め込まれて教えてもらって

 

店長が「じゃあ、一人で今日入ってみて。俺帰るから」

 

マジ?無理やろ。レジ以外わからないぞ。まあ良いっか。どうせ誰も深夜来ないやろ。と思ってると

 

田舎と違い結構頻繁にお客さんが来て

めちゃくちゃ大変だった。

客が居ない合間を縫って掃除、ガラスをダスキンでやったりポテチの袋を整えたり、在庫の数を書いたり

途中からもうポテチの袋は放棄した。

忙し過ぎてパニックになったまま、朝を迎えた。

これは無理やな。コンビニ舐めてた。

やめよ。

店長に電話をすると「何考えてんねん1日で!仕事なめ過ぎやろ!大体な…」

 

ワーワー言われてすみませんすみませんと繰り返し電話の前でペコペコしていた。

コンビニはもうやめよ。

 

そういえばNは何のバイトしてるんやろ?

同じマンションに住んでるN 。

彼も当然バイトしてるだろう。

Nに電話すると、「家をおるから来て話しする?」と言った。

相変わらず気さくな人だ。

「行くわー」と言ってすぐ行くとピンポン鳴らしても出てこない。

しばらくするとガチャとドアが開き

裸のN が現れた。

「シャワー浴びててんごめんな、早かったな」と言った。

裸のままのNが話しかけてくる。

 

N 「で、なんやったん?」

「あ、服着たら?」

N 「ちょっと冷ましてんねん」

「ええ身体やな」と言うと

N 「せやねん。ええ身体やねん」

と言ってご満悦な感じで

N 「そろそろええかな」と言って

紫のTシャツを着た。

一つの儀式をやり終えた気がした。

 

「あの〜バイト探してんねんけどN君何のバイトしてんの?」

N 「あーちょっと歩いてすぐの牛丼屋やで」

「え!あそこ?」

 

何回か行った事があったけどNを見かけた事がなかった。

 

N 「深夜しか入ってないからなー。深夜は時給が高いねん。今人足らんから良かったらヒラ3君店長に言うとくわ」

「ありがとう頼むわ」

 

Nに頼んで新しいバイト先が決まった。

優しい人と同じマンションで良かった。

 

続く