5年後 5

放送作家学校に行く日がきた。

ここにはベテラン放送作家の先生が講師を務めているという。

どんな先生なんだろう。

少しは知っていた。

全国ネットの番組なんかでよくエンドロールで名前を見た事があったからだ。

 

ぷくが働いていたスーパーの近くの駅から電車に乗り15分くらいすると最寄り駅に着いた。

そこから歩いて5分くらいだ。

 

とあるビルに入り、エレベーターで5階に上がると緊張してきた。

 NSCの面接を少し思い出していた。

5階に着くと少し影のある男の人が名簿を見ながら、

「ああヒラ3さんね。どうぞ」

と淡々と言い、手で促され

教室みたいなとこに入った。

 

既にみんな座っていた。

 

第1感、思った事は「若い人が多いなあ」だ。

20歳前後の若い人達が座ってる。

 

自分は歳を取ったんだなあ。

 

椅子に座ると、程なくして先生が入ってきた。

背は低いがスキンヘッドで威厳がある。

和服みたいなのを着てた。

 

「えーみなさん、ようこそここへ。何で知ってここへ集まったのかはわかりませんが、まず一つお笑い放送作家として伝えたいのは

この世に"笑っていけないモノはない"という事です。」

 

そんな感じの事を言ってたと思う。

笑ってはいけないモノ?

偉人や賢人、お年寄り、障害者の方を頭に浮かべた。

 

うーん。

 

笑いにはそこまでのパワーが秘められてるという事なのか?

しかし、笑いに変えてその人が傷ついたらどうする?

 

自分ではよくわからないし

今考えてもわからない。

 

そもそも、傷ってなんだろう。

笑いによって受ける傷

 

例えば自分の頭にでっかいキノコが生えていたとする。それは抜けないし、切っても再生してくる。

周りの人には生えてない。

自分だけが生えてる。

"自分だけが人と違う"

それはコンプレックスになるだろう。

小学生なら

「キノコ野郎www」と

いじめられるのは確実だ。

 

傷つくと思う。

でも、その傷ってなんだろう。

 

他人と自分はそもそも"違う"

「同じがよかった」という気持ちは、そもそも間違いで、キノコがもし生えてなかったとしても自分と他人は違うのだろう。

 

違って当たり前で自分と他人Aと他人Bと他人Cもそれぞれ違う。

 

つまり同じだと思ったなら「傷つく」し

違って当たり前だと思ったなら「傷つかない」のかもしれない…

 

そんな事を考えながら

 

最初の授業はベテラン作家の話と

自己紹介で終わった。

自己紹介のやり方も一風変わっていて、

「隣の席に座った人とペアになって二人で前に立ってお互いに質問の投げ掛け合いをしながら自己紹介していく」

という面白いものだった。

 

授業終わりに先生は

「よし、飲みにいくぞ」

と言った。

どうやらお酒が大好きな先生らしい。

 

みんなでゾロゾロと飲みに行った。

 

先生のテーブルに座ったら音楽の話になった。音楽が好きらしい。

「好きなミュージシャン」を言っていく流れになった。

スピッツ」と答えると先生はへえ〜〜みたいな顔をした。

何のへえ〜〜だろう。

 

その後、全員ベロンベロンになるまで飲み、先生だけが「次の店いくぞ」と

ミナミの街を闊歩していく。

 

脱落者続出で

ハンターハンターの一次試験みたいな感じなんだろうなこれは、と勝手に思い込んでなんとかついていこうとしたら

男2女2先生オレの6人に減っていた。

 

この時に帰っておけば良かったな、、

と後から今でも後悔するような出来事が

起こる。

 

とある、バーに着いた。

先生は目が座っている。

女性が来てくれるのは非常に喜ばしい事だと言った。

男性陣に向かって

「おまえら、どっちの女の子がタイプや?」と聞いてきた。

 

男二人が先に答えていった。

自分の番がきた。

そこで、自分は「どちらの方もかわいいです」と言った。

 

先生の顔色が変わった。

 

先生「おまえ失礼やろ!何様や!」

 

意味がわからないけどとりあえず「すみません」と謝った。

先生の怒りは収まらず

「どういうつもりや?」と聞かれた。

「いや、本当にどちらの方もタイプなんで選べないです」

「考えられへん!失礼すぎる!」

 

そもそも最初に女性に対して失礼な質問をしてるのあんたやろと思いながら、すみませんを連呼していた。

あと、自分自身も嘘をついていたからだ。

好みのタイプは「Kさん」だ。

 

その後、30分くらい説教された。

 

家に帰るなり、

「初日から最悪だ〜〜〜〜」

と思いながらとりあえず飲み過ぎて気持ち悪いので吐いて寝た。

 

次の日、結石の病院に行き痛み止めの薬をもらった。

帰りにぷくから電話があった。

 

ぷく「結石?大丈夫なの?早くよくなったらいいね〜」

 

優しい

 

ぷく「そういえばさ、友達に誘われてコンパ行ったんだよね〜」

 

オレ「(コンパ???聞いてないぞと思いながら)へえ〜〜」

 

ぷく「そこに変な人が居てわたしの事、気に入ったみたいで言い寄ってくるんだけどねwどう思う?」

 

オレ「(誰だよそいつ殺すぞ)良いんじゃない?」

 

ぷく「ははは、まあいいや〜またね〜」

 

また、嘘をついた。

オレは嘘つきだったのだ。

 

続く

youtube

youtubeを見るのが好きだ。

暇さえあれば見ている。

簡単で楽過ぎる。

無駄な操作があまりなくてダイレクトに

自分が見たい動画に向かっていける。

素晴らしい最高。

 

そして最近、youtube投稿を再開した。

その名も「スーパー小力TV」

GIF動画でよく使っていた小さい力士をとある方から

「かわいいね。名前なんていうの?」

と聞かれた事があった。

名前を決めてなかったのだが、

なんとなく

「小力(こりき)です」

とその時に名前を決めた。なんとなく自分でも気にいった。

よし、このキャラクターを名前にしたチャンネル名にしよう。

 

youtubeが好きなので

youtubeの"中"に入りたいと思い

5年くらいまえにyoutubeチャンネルを作ったのだ。

手描きのアニメーション動画をガンガン上げていこうと

チャンネル名を「ウミアニメ」にした。

ウミは膿だ。

創作とは身から出た膿のような物なのだろうと思い込んでいた。

今考えても相当ヤバイ奴だと思う。

なんとなくyoutubeに上げなくなり、5年放置していたらある一つの動画だけが

130万再生になっていた。

https://youtu.be/y6n3-HARVEU

 

多分、なんらかの"層"にハマったのだろう。

他の動画は全然再生されてないのに、なぜあれだけが?謎である。

こういう事があるのも面白い。

放置してたら伸びてる場合がある。

適当に色々投稿して放置するのも一つの楽しみ方だと思う。

 

youtube動画投稿を再開したのは配信が向いてないと思ったからでもある。

配信はリスナーとのコミュニケーション

であり、そこが上手くないときついと思う。

実際に自分は2、3年やって向いてないと思ったし、向いてないと他の人にも言われた。コミュ障なのだ。

配信では基本、コメントとの調和を求められるので有名な人じゃない限り長々と独り言はやりにくい。

 

動画は違う。

最初からコメントなんかない状況だからめちゃくちゃ独り言出来る。

独り言をするしかないからだ。

その状況は喋りやすい。

 

なので、配信で上手く喋れない方はまず

youtubeをやってみるのがオススメである。

 

じゃあ、何を動画投稿しようか?

自分の場合はとりあえず、PS4が眠っていてクリアしてないゲームもあった。

PS4にはyoutubeに直接アップロードする機能もあって、

これは調べてみると、あらかじめメーカーがゲーム実況動画をyoutubeに上げるのを仕様にしていて、なんなら宣伝のため推奨しているとの事らしい。

ゲーム実況動画の著作権侵害を心配していた自分は心置きなくゲーム実況動画をアップロードする事が出来るのだ。

最高じゃん!

 

その環境に自分がいた事に気付いた。

 

とりあえず部屋の片隅に放置してあるクリアしていないゲームをクリアしよう。

クリアしていないゲームはやはり気になるものだ。埃を取ろう。

これでもFC時代からやってるゲーマーの端くれである。

 

youtubeで出来る事はたくさんある。

 

全国の公園を巡ってみようか?

GTAで車から延々と車載雑談をしようか?

いきなり料理動画でも録ってみようか?

 

発想は無限大である。

 

その時に自分がやりたい事をやろう。

楽しい事をしよう。

そしてみんなと共有出来たら言う事なしだ。

スーパー小力TVチャンネル登録よろしくお願いします。

https://www.youtube.com/user/hiramiauto

 

 

今日もyoutubeを見て寝よう。

 

同窓会

1月3日

中学の同窓会の日だった。

十何年ぶりに集う日。

朝方、東京に住んでる旧友からLINEがきていた。

「ちょっと遅れるわ。先に行っといて」

三重に来たのか。俺は行くと思ってるのだろう。

 

"なんとなく"行きたくなかったのでそれには返事を返さず電車に乗って将棋大会に向かった。いつもの道場だ。

 

将棋道場に着くとたくさんの人たちが盤を挟んで夢中に考えていた。

楽しそうだ。

大会開始時刻は13時からだったけど少し遅れて13時半くらいに着いた。

まあ遅れても大丈夫で参加出来ると思ってた。席主は優しいお爺さんだ。

 

お爺さんはチラリと俺を見るなり、まるで無視するかのようにせわしなく対局が終わった人の次の対戦相手を呼んだりしている。忙しそうだ。

 

また旧友からLINEがくる。

写真が送られてきた。

 

「誰やねん」

「〇〇やわ。はよ来い」

 

そこで、多分俺は対局していたら行かなかったと思う。

いつもの優しいお爺さんの態度が何かおかしいのもあって、これは同窓会に行く事が"あらかじめ運命的に設定"されてるんじゃないのか?とかヤバイ事思いながら

 

同窓会に行く事にした。

 

一次会は終了して、30人くらい居た人たちが10人くらいになってると

LINEがきた。

 

「はよ来て"ヒラ3待ち"みたいになってるわ」

 

目を疑った。はあ?中学の時、地味で地味で死ぬほどモテなかった俺待ち???ふざけんな。

 

着くと、みんな居た。男10人女10人くらい居る。

謎の拍手をされた。

みんな老けたなあ。

「どういうこと?」

 

と、隣のOに聞くと

 

O「はあ???覚えてないの???ヒラ3が5年前に三重に帰ってきた時、俺に同窓会やってくれ。って言ってきたんやろうが!なんで来ないねん!」

怒られた。

知らない。覚えてない。

こいつ嘘ついてる、しかし半信半疑だ。

 

「"やってくれ"とは言ってないんじゃないのかな?同窓会ないの?って聞いただけでは?」

 

O「いや、ハッキリ言ってたよ。そっから俺ら動いたんよ。ハガキ作って書いて配って」

 

知らなかった。

 

こういう事は昔からよくあったので本当なんだろうと思った。

なんとなく面白いだろうなと思う事を口に出すと俺の知らない所で事が進んでるのだ。

 

「ごめん」と謝ったらなぜかみんなに爆笑されてムカついた。

 

その後、女子軍団はなぜか帰り、野郎だけになって飲みに行った。

つまんねえなおい!と思ったけど

 

家族とか子供とかの写真見たらめちゃくちゃ可愛かったし

中学のとき好きだった女子ランキングとかでめちゃくちゃ盛り上がって、結果的に良かった。

 

中学の時、好きだった「〇〇さんに会いたいなあ」とみんなに呟いておいたので、

 

多分、次に会えるだろうな。

帰省

1月1日。

軽自動車に乗って夜、実家に向かった。

田舎の国道を15分くらい走ると35年ローンをまだ完済していない実家が見えた。

兄家族の車が止まってるのが見えた。

自分の車を止めるスペースあるかな?

とか思った瞬間、なんとなく実家を通り過ぎた。

 

あれ?なんで?

 

ここ数年、元日に甥や姪の顔を見たい、そしてお年玉をあげたいという気持ちで実家に寄っていたのになんでだろう。

 

そのまま通り過ぎると道が真っ暗になった。

周り一面田んぼで、その暗やみを一刀両断するかのような県道を走っている。

暗過ぎて怖いからノロノロ走ってると後ろから今まで何千回もこの道を通ってきたと言わんばかりの地元民らしいヤンチャな車が煽ってきた。

事故ったら死ぬ。落ち着け…

ゆっくり走ろう。はよ抜いていけや

しかし、この軽のライト暗過ぎやろ…

 

ビクビクしながら闇をしばらく走ってると明かりが見えた。

後ろを走っていたヤンチャな車もどこかで曲がっていて既にいなかった。

 

スーパーの駐車場に車を止めて、少し落ち着こうと思った。

心臓がドキドキしている。

 

プルームテックの緑を吸いながら、なぜ実家を通り過ぎたのか考えた。

お年玉をあげるのが嫌になった?

うーん、たしかに甥や姪が総勢4人はいるけど自分の中のお年玉分配比率

 

小学生未満→1000円

小学生低学年→2000円

小学生高学年→3000円

中学生以上→5000円

 

を考えると一万以内で収まる。

一万で嫌になる事はありえない。

むしろ、、、あげたい気持ちだ。

 

あ!!!

 

そのあげたい気持ちが問題なのかもしれないと思った。押し付けかも???

興奮してプルームテック吸い過ぎたのでカプセルを交換した。

え?でもあげたい気持ちは"叔父"として

ごく普通の感情だと思う。

 

自分が小学生の頃を思い出してみた。

 

自分はいやらしい子供だったので、

欲しいゲームソフトの値段を見て、

あのおじさんは大体5000は毎回くれるなあ、あのおばさんは3000くらいかなあ。じゃあ、あのおじさんとおばさんに会えば"超魔界村"買える!

 

とか綿密な計画を練っていた。

 

自分の可愛い甥や姪もそうなのだろうか?

 

多分、そうだろう!

血引いてるやん!

やらしい計算をしてるに違いない!

 

じゃあ、ここで自分が行かないと可愛い彼らの計算が狂うではないか!

 

よし!行こう!

 

実家に着いた。

 

父親が出迎えてくれた。

酔っている。

酒乱親父で暴れる癖がある。

 

父「おー!今日は泊まっていけよ!酒ならあるぞ」

「あー用事あるから帰るわ」

用事ないけど、この家にはあまり居たくない。

 

甥達が次々と現れた。

なぜかぴょんぴょん跳ねてる。正月仕様かよ可愛い。

あらかじめポチ袋に入れておいたお年玉を配った。

「ありがとう!ありがとう!」の連呼が飛んできた!至福の時だ。しかし

 

あれ?一番下の小学生未満の甥だけが不満気だ。

幼稚園の甥が涙を潤ませながら

「一枚しか入ってない…」

と言った。

 

やばいと思って、もう一枚千円をあげようとしたが、

 

ズレてくると思った。

もう一枚全然あげてもいいけど

 

小学生未満→1000円

小学生低学年→2000円

小学生高学年→3000円

中学生以上→5000円

 

小学生未満の子を2000円にすると

この表の金額を倍にしないと辻褄が合わなくなる…

 

その時に助け舟が来た。

 

兄だ。

 

「100円かと思ってたら1000円やん!良かったなあ〇〇。お菓子いっぱい買えるな。小学校に上がったらもっと貰えるからな」

 

すると、小学生未満の甥は落ち着いた。

 

すごいなと思った。

4人の子を持つ親は子供をなだめる方法を熟知しているのか…

 

しかし、この兄は昔から憎たらしいから

有り難いけど少しイライラした。

 

お年玉をあげたら、一仕事終えた気になって落ちついてきた。

母親が作った雑煮を食べていると、

 

甥達が将棋を始めていた。

 

まじか!え!去年、将棋とかしてなかったやん!俺めちゃくちゃ将棋好きやねん!興奮して餅が詰まりそうになった。

 

小4の甥と小1の甥の対局を見ていた。

ん???小1の甥の方が明らかに筋の良い指し方をしている。

この子は伸びるぞ!

やっぱり小1の甥が勝った。

 

興奮して最近、将棋道場に通って小学生2年の子と指して負けた話をした。

すると兄がニヤニヤしながら

「え?小学生に負けたん?w腹立ったやろ?w」

 

あーこいつやっぱクズだわ〜と思った。

小学生に負けたら、たしかに腹立つけど、"お前ほど"将棋でそこまで腹立つ訳ないやろ。

この兄は昔、将棋とかゲームで勝つと怒り狂って殴りかかってきたチンピラなのだ。

こういう奴はプライドが過剰に高すぎて自分の負けを認められないのだ。

自分の負けを認められないという事は、

勉強も学習もしないだろう。

大体、将棋というのは二人でやるもの。

半分は負けるのだ。

このクソ兄は100パーセント勝つつもりだったのか?ジャギだろこいつ。

 

小学生はめちゃくちゃ伸びる時、

俺が負けるとかどうでも良い話

この小1の甥は才能があるから道場に連れて行きたいというのが真意だったのに…腰を折られた。

 

小1の甥が「〇〇君(自分の名前)とパパ今度指してみて」と言った。

 

よし、昔の恨み晴らしてボコボコにしてやるか?

あれ?兄が目を瞑ってる。

寝たフリだ。まさかのタヌキ寝入り!

新喜劇かこいつ!馬鹿だろ!

 

負けがそんなに怖いなら死んでしまえ!

クズ野郎!

 

仕方ないので、将棋の駒でやる遊び「山崩し」というのを甥達に教えてあげた。

人差し指のみで山積みになった駒を音を「カチッ!」とか鳴らさずに取る遊びだ。

 

甥達はこの遊びが妙に気に入ったみたいで自分が人差し指で取ろうとしてる間、

ずっと盤スレスレの所で耳をすまして「カチッ」て鳴るか聞いていた。

「鳴った鳴った!」「今カチッ!て鳴った」とか騒いでいた。

楽しそうで良かった。

 

時間がきて、帰る時間だ。

兄家族は帰っていった。

母も帰っていった。

(酒乱親父の暴力に耐えかねて別居中)

自分も車に乗った。

 

35年ローンの家に親父を一人残して。

 

帰り道、ひどく腹が減ってる事に気付いた。餅二個の雑煮食べたのに。

Mの看板が見えたのでドライブスルーで

マクポセットを買ってポテトをつまみながらまた来年、実家に帰ろうと思った。

 

ポテトが妙にしょっぱかった。

 

 

ソフトせんべい

今、無性にぱりんこを食べたい。その気持ちを誰かに伝えたくて文を書いている。

許して欲しいこの気持ちを。

ぱりんこ知らない人に一応説明すると、

「ソフトせんべい」と言われるジャンルに所属してる塩が効いた米菓子だ。

煎餅も好きだけど煎餅は少し「ガチ感」強めで歯ごたえがあり固い。

煎餅には歴史と伝統があり、職人さんが

「一枚入魂」と書かれたハチマキを締めて、早朝から深夜まで仕事をしてるイメージがある。

 

凄すぎて重みを感じる。

 

煎餅を批判する事は許されないイメージだ。

少しでも煎餅を批判すると

あらゆる"煎餅通"の方々のお返しが待っている。

「わかってないなーw」

「熱い緑茶と一緒に食べてからもう一回出直して来てください」

「煎餅は厳密に言うとお菓子というジャンルを超えてるから、そもそもの前提があなたズレてるよ」

 

そんな中、登場したのがソフトせんべいだ。

まず手に持った時に軽い。

パリパリパリパリガンガンいける。

 

パリパリパリパリパリパリ

 

「そんなの煎餅じゃないよーw」

 

その声をかき消すかのようにパリパリパリパリしたい今。

 

近くのコンビニまで歩いて2分。

しかし寒い。

「寒さ」と「ソフトせんべい」

が頭の中で今闘っている。

 

寒さが優勢だ。

ソフトせんべいは多分寒さに負けるだろう。

「ソフトせんべいごめん。今日は無理」

ソフト「ん?いつ食べてくれてもいいよ」

 

ソフトせんべいはいつもソフトで優しい奴だ。

明日食べよう。

5年後 4

放送作家学校に入るための履歴書を書いた。

相変わらず汚い字だな…

丁寧に書いたつもりなのだが…

封筒に入れ郵送した。

 

約1週間後くらいに合格通知がきた。

よし、とりあえず行く先が決まった。

しかし、石が疼く…早く出てくれないかな…

痛みが激しくなると座薬を挿し、無くなると病院にまた薬を貰いにいくという事を繰り返していた。

一生出なかったら、どうしよう…

無限地獄…

こんな状態で大丈夫なのかしら

身なりも整えないとな…

伸び切った髭を剃り、めちゃくちゃ散らかったゴミ部屋を掃除した。

西成という地区は、自分みたいなズボラ人間に取ってみたらもの凄く居心地

の良い場所だ。

他人の事を詮索する人が少ない。

パジャマみたいな格好で昼間出ても平気。

最高の楽園だ。

反面、ダラダラした不規則な生活になりがちだったりもする。

Nなんかは部屋も綺麗で、規則正しく生活してるように見えた。

ゆえに、これは地域がというより

自分本来の性質と一致しただけだろう。

決して西成のせいではない。

 

ぷくに言われた言葉で思い出したのが、

何ヶ月か一緒に住み始めて二人でスーパーに買い物に行った帰り道の事。

何やらぷくが浮かない顔してため息をついてる。

「どうしたん?」と聞くと

ぷく「いや、なんでもない」

「何なん?」

ぷく「うーん、とても言いにくい事なんだけどね…」

「うん」

ぷく「〇〇ちゃんと居ると楽しいけど、凄く自分が"ダサく"なった気がするの」

「マジか」

「マジ」と言ってぷくは笑った。

 

全然分からなかった。

来た時と、そんなに服装とか変わってないように見えるけどな…

多分、服装とかの事ではないのだろう。

 

NSCを卒業してからバイトだけで生活し、"何もやろうとしていない"自分に対して感じた事なのだろう。

 

他にもこういう事があった。

ぷくがスーパーでのバイトに慣れてきて友達も出来た頃、

迎えに行くと今までは、はしゃぐような感じで走ってきたのに

友達と一緒に迎えに来た自分を無視するような感じで歩いていった事があった。

焦って追いかけていくと結局、「ネタだよ〜」とか言って笑っていたが、

今思うと不甲斐ない自分に対して

「もっとしっかりしろ!」というメッセージという捉え方もできる。

 

そんな事を思い出しながら

 

覚悟を決めて放送作家学校に行こうと思った。

 

続く

 

 

 

5年後3

放送作家学校に行こうと思った。

自分はやっぱりお笑いが好きだし、何より自分が一番笑いたい。

そんな事を思い出していた。

 

その学校は履歴書を書いて送るだけで、

合否が決まるというもので、久しぶりにワクワクしながら天下茶屋駅、構内にあるCDショップ兼文具屋に買いに行った。

駅には、証明写真を撮るボックスもありそこで写真も撮った。

そういえば、ここはぷくと来た事がある。

 

ぷくは大阪に誰も知り合いが居なかったため、ずっと寂しそうだった。

自分が深夜バイト行く前に起きると夕食が用意されてて何食べても美味しく料理の腕は上手かったと思う。

朝方帰ってくると美味そうな朝食が用意されていた。

ゆえに、吉野家で賄いを食べなくなった。

めちゃくちゃ有難いけどちょっともったいないなとも思った。

賄いシステム最高だと思ってたからだ。

しかし、ぷくの料理美味い。

ぷくは昼間、ずっと本を読んでいて、読み終えたらすぐ図書館に行くというのを繰り返していた。

自分が休みの日には二人でゲーセンに行き、録ったデモテープを送ったりしていたのだ。

そういう日々を繰り返しある日、

ぷくが「実家にお金を送りたい」

と言い出した。

「バイトするわ!暇だしね!」

そう言って一緒に天下茶屋駅までついていったのだった。

 

ぷくが証明写真BOXに座る。

 

「怖いからきて」

「いや、映ってしまうがなw」

「なんか証明写真て撮るタイミングおかしくない?」

 

カーテンの中からぷくの声が聞こえる。

 

「はよ撮れやw」

 

カシャッ

 

ぷくは現像された写真を見て不満足に呟いた。

「なんか変じゃない?」

「こんなもんやろ」

「なんか暗いっていうか覇気がない感じ」

「そんな事ないよ」

「もう一回撮ろうかな」

「いや、もう一回600円はキツイっしょ」

「けど、その600円をケチったお陰でバイト落ちたら、その方が損じゃない?」

「うーん…」

 

結局、ぷくはもう一回撮った。

思いっきり目を見開いて不自然なくらい笑顔の写真が現像された。

不自然だな…と思った。

明らかに「うかりたいでっせ」感丸出し

 

「これで良いでしょ?」

ぷくは満足気だ。

 

正直、さっきの方が良かったけど、あまりの満足さ感を醸し出してくるので

不自然な高い声で

「ええやん!」

と言った。

 

少し訝しげな顔をしながらぷくは

「よし、じゃあご飯食べよ〜」

「うん」

「ケンタッキーあるじゃん!!!食べよ食べよ」

二人でケンタッキーを食べた後の帰り道

 

ホームレスの人が道に寝ていた。

 

ぷくはそれまでホームレスの人を見かけた事がなかったので

びっくりして「え!」と言った。

 

自分はもう既に"慣れていた"ので

「こういう人もいる」と言った。

 

ぷくは助けないといけないと思ったのか、近くのコンビニでさっき買った

「おにぎり」をホームレスの人に渡した。

 

家に帰り、口論が勃発した。

 

「おにぎり無くなったな」

「さっきの人にあげたからね」

涼しい顔してるぷくに何か腹立ってきた。

「明日もあげるんやろな?」

「は?」

「今日あげたって事は明日もあげないとあかんやろ!」

声を荒げてしまった。

「いや、今日見てかわいそうに見えたからあげただけだよ。明日、外に出て歩いてみて"もし、その人が居て"かわいそうだと思ったら、またあげるし、かわいそうじゃなかったらあげないだろうね」

ぷくは冷静な声で言った。

 

そんな事を思い出しながら、履歴書を買って家についた。

 

綺麗に書かなきゃな…

 

 

続く