5年後3

放送作家学校に行こうと思った。

自分はやっぱりお笑いが好きだし、何より自分が一番笑いたい。

そんな事を思い出していた。

 

その学校は履歴書を書いて送るだけで、

合否が決まるというもので、久しぶりにワクワクしながら天下茶屋駅、構内にあるCDショップ兼文具屋に買いに行った。

駅には、証明写真を撮るボックスもありそこで写真も撮った。

そういえば、ここはぷくと来た事がある。

 

ぷくは大阪に誰も知り合いが居なかったため、ずっと寂しそうだった。

自分が深夜バイト行く前に起きると夕食が用意されてて何食べても美味しく料理の腕は上手かったと思う。

朝方帰ってくると美味そうな朝食が用意されていた。

ゆえに、吉野家で賄いを食べなくなった。

めちゃくちゃ有難いけどちょっともったいないなとも思った。

賄いシステム最高だと思ってたからだ。

しかし、ぷくの料理美味い。

ぷくは昼間、ずっと本を読んでいて、読み終えたらすぐ図書館に行くというのを繰り返していた。

自分が休みの日には二人でゲーセンに行き、録ったデモテープを送ったりしていたのだ。

そういう日々を繰り返しある日、

ぷくが「実家にお金を送りたい」

と言い出した。

「バイトするわ!暇だしね!」

そう言って一緒に天下茶屋駅までついていったのだった。

 

ぷくが証明写真BOXに座る。

 

「怖いからきて」

「いや、映ってしまうがなw」

「なんか証明写真て撮るタイミングおかしくない?」

 

カーテンの中からぷくの声が聞こえる。

 

「はよ撮れやw」

 

カシャッ

 

ぷくは現像された写真を見て不満足に呟いた。

「なんか変じゃない?」

「こんなもんやろ」

「なんか暗いっていうか覇気がない感じ」

「そんな事ないよ」

「もう一回撮ろうかな」

「いや、もう一回600円はキツイっしょ」

「けど、その600円をケチったお陰でバイト落ちたら、その方が損じゃない?」

「うーん…」

 

結局、ぷくはもう一回撮った。

思いっきり目を見開いて不自然なくらい笑顔の写真が現像された。

不自然だな…と思った。

明らかに「うかりたいでっせ」感丸出し

 

「これで良いでしょ?」

ぷくは満足気だ。

 

正直、さっきの方が良かったけど、あまりの満足さ感を醸し出してくるので

不自然な高い声で

「ええやん!」

と言った。

 

少し訝しげな顔をしながらぷくは

「よし、じゃあご飯食べよ〜」

「うん」

「ケンタッキーあるじゃん!!!食べよ食べよ」

二人でケンタッキーを食べた後の帰り道

 

ホームレスの人が道に寝ていた。

 

ぷくはそれまでホームレスの人を見かけた事がなかったので

びっくりして「え!」と言った。

 

自分はもう既に"慣れていた"ので

「こういう人もいる」と言った。

 

ぷくは助けないといけないと思ったのか、近くのコンビニでさっき買った

「おにぎり」をホームレスの人に渡した。

 

家に帰り、口論が勃発した。

 

「おにぎり無くなったな」

「さっきの人にあげたからね」

涼しい顔してるぷくに何か腹立ってきた。

「明日もあげるんやろな?」

「は?」

「今日あげたって事は明日もあげないとあかんやろ!」

声を荒げてしまった。

「いや、今日見てかわいそうに見えたからあげただけだよ。明日、外に出て歩いてみて"もし、その人が居て"かわいそうだと思ったら、またあげるし、かわいそうじゃなかったらあげないだろうね」

ぷくは冷静な声で言った。

 

そんな事を思い出しながら、履歴書を買って家についた。

 

綺麗に書かなきゃな…

 

 

続く