何もしてないのに解散か…
今考えると「へこみパン」なり、「バファリンの半分は優しさ」なり"一度"はネタ合わせをして"手見せ"に向かえば良かったんだと思う。
すると「だから言っただろ」とか「やっぱアレはウケないな」とか何かしら改善したりする余地、収穫はあったはずだ。
その為の「手見せ」でもあるというのが当時は気づけなかった。
解散はそれから考えても遅くなかったはず。
「もうあいつ嫌い!プンプン」
精神が小学生だったのだ。
小学生恋愛。
感情に任せて、解散を決意した。
腹立って王将の餃子を三人前食べた。
次の日、手見せの授業。
体育座りをしてみんなのネタを見ていた。
Yが横に来ない。
授業終わり、Yに話しかけた。
喫茶店行こや。Yは何かを察知したのか間の抜けた声で「ああ」と言った。
Yに喫茶店で頭を下げた。
「勝手でごめん。解散しよ。」
Yはタバコを吹かしながら
「わかったけど、一つ条件がある」
と言った。
「なに?」
「おれ、ヒラ3の他にも一人組みたい奴おってん。そいつと話してくれへん?」
瞬間、ハっとなった。
風貌とか身長、服装など
言われなくてもすぐわかった。
明らかに一人、禍々しい紫色の気を放ってる浮いた男が居たからだ。
「あいつやろ!わかった」
喫茶店を出て走った。
一刻も早くYと解散したい気持ちもあったがその紫色のオーラをまとった奴に話しかけてみたいという気持ちが強かったかもしれない。
こういう状況じゃない限り一生話しかける勇気を持てなかったかもしれない。
幸いはそいつはまだ、NSC近くに居た。
意を決して話しかける。
「ごめん、ちょっと話し良い?」
「え?何?」
「今、ピンなん?コンビとか予定ある?」
「まだちょっとわからんけど」
「一回ちょっと自分と組みたいって奴が居て、話しだけでも聞いてやってくれないかな?」
「あ、ええよ〜」
「わかった連れてくる。ちょっと待ってて」
喫茶店に戻ろうとして
振り返ったらYが居た。
息が激しい。走ってきたんだろう。
「こいつやねん」
「わかった、ほないこか」と言って、Yとそいつはどこかに歩き出した。
Yは「ありがとうな。」と最後に言って去っていった。
その時、桃太郎電鉄が頭をよぎり、
キングボンビーをなすりつけた気持ちになっていた。罪悪感。
その気持ちのまま「ありがとう、頑張れよ」と言った。最低だ。
Yが組みたいと言った男は
Sと言う
先に言うと
Sとはこれから先、長い付き合いになる
けれど、この時点ではまだわからなかった。
続く