小学一年から三年くらいまで空手道場に通っていた。
なぜ通い始めたのかは覚えていない。
友達の兄さんが空手やっていてなんとなくやるか?みたいな事を言われて自分なりにある程度好奇心があってみたいな流れだったと思う。
親と一緒に空手道場に行った初日の事は今でもよく覚えている。
空手道場と言っても体育館だった。
デカい体育館の半面を使ってそこを道場としてるわけだ。
もう半面はママさんバレーの人達が使っていた。
着くなり一番偉い先生が出迎えてくれた。
「おう、来たか。まずは靴下を脱ぎなさい」
靴下を脱いで親に預けたらめちゃくちゃ怒られた。
「自分でちゃんとひっくり返しなさい」
靴下で怒られた。怖いなと思った。
流石、空手の先生だ。
帯を見るともちろん黒帯なのだが、めちゃくちゃ擦れていて年季が入っている。
近くに寄ると空手先生ぽい匂いがした、なんというか体臭と強さと体育館の匂いがミックスされたような匂い
夏の匂いに近いかもしれない。
さあ、空手道場初日
体育館に入ると50人くらいの道場生が居た。
調子に乗って来てみたものの、既にもう嫌だな、帰りたいなと思った。
まず初めに習ったのは"正拳突き"だ。
腰を落としグーに握った手を真っ直ぐ前に速く伸ばすと同時に「押忍」と声を上げる。
それを延々と繰り返して初日は終わった。
暫く空手に通う日々
半年くらい経つと"他流試合"というものがありみんながバスに乗って挑みにいく催しがあった。
自分 は闘わないけれど黒帯の先輩達の応援にいくのだ。
結果応援してた先輩達は他流試合で全員負けた。
空手の先生は激怒し、地元の体育館に帰ってくるなり
「おい黒帯以下のお前ら、黒帯の奴らの溝落ちに正拳突きしていけや」
いきなりそんな事言われた僕たちは面食らったけれども先生が言われた事には逆らえない。
黒帯の先輩達を白帯の俺たちが順番に正拳突きしていく。
途中、幼なじみの黒帯兄さんの腹を正拳突きした時に「ヒラ3負けてごめんな」
とか細い声で言われ自分も泣きそうになった。
それから暫くしてその体育館でやってた空手道場はなぜか"エアロビクス"を取り入れて、黒帯の先輩達にキレてた先生達がエアロビクスの女先生の身体を見てデレデレしてるのを子供ながらに見てしまい、ここはもうダメだと空手をやめる事を決意する。