芸人くずれと役者くずれ達が
西成の小さな部屋に集まってダラダラする日々、ウイニングイレブンにみんな夢中だ。集まってゲームしていた。
発砲酒の缶、ポテチの袋、イカくんなどで机の上が散乱している。
テレビの画面にはウイニングイレブンのゴールシーンのリプレイが映っている。
誰かが「アンリの動き面白い」と言ってゲラゲラ笑っていた。
アンリが直角にキビキビと動きゴール隅にシュートを決めているシーンの"直角にキビキビ動く部分"を何回も繰り返してみんなで笑っていた。
しばらくして唐突に誰かが「大喜利ライブせえへんか」と言った。
自分が言ったのかもしれないが覚えていない。
やろか、と言って何も決めてないまま、とりあえず小屋を抑えようという話になり西成区民館にみんなで行った。
行動が早い。
それぞれ4人がモヤモヤした先行きの見えない物を所有していたからであろう。
"何かしなきゃ"
そういった共通の気持ちを持っていた。
4000円くらいで教室みたいなとこを借りた。さあ、大喜利ライブやるぞ。
役者くずれのOさんが衣装を買いに行こうと言った。
衣装?
O「やっぱり"舞台"に出るからにはねえ。笑点みたいに色でわけようよ」
一番年上のOさんが"舞台出た事あるマウント"を取ってきたのでみんな渋々従う事にした。
ユニクロで黄、青、紫、赤
のシャツを買ってきた。なぜか青の取り合いになった。Nが「赤でええわ"情熱"の」とか言うとSが「ミステリアスな紫で」とか、なんとか言ってて
なぜか、俺は黄色を着るハメになった。
Oさんから「黄色は最強」という訳の分からない慰めを貰った。
部屋に戻り内容をみんなで話し合った。
俺とNとSは「普通に大喜利だけやりましょう」派だったが
役者志望のOさんは「それだけだと弱いからストーリーを入れよう」と言った。
三人は顔を見合わせて「ストーリー?」
と聞いた。
O「前半は普通にみんなで大喜利するけど後半喧嘩が始まる流れにしよう。お客さんビックリするぞ!」
喧嘩ドッキリきた!!
鼻息と語気の荒さ、大声により誰も逆えなかった。
集客はどうする?
書院というワープロでとりあえずチラシを作って天下茶屋駅でまきまくろうという話になった。
ライブ名はどうする?
Oさんがその時、なぜかフランスの外人部隊に憧れていた為、「外人舞台」というライブ名に決まった。
ワープロでチラシを100枚くらい剃って駅でチラシ配りをする事になったのだが、Nがチラシ配りを渋りだした。
Nはスマートに生きたい性格な為、チラシ配りは性にあってなかったみたいだ。
それでもみんなで説得して無理矢理参加させた。
Nは「あの女の子可愛い」ばっかり言っていた。
ライブ当日。
チラシ配りと知り合い呼びまくってなんとか10数人が来てくれた。
Oさんが、自分のほっぺたを水戸泉めたいに張ってから「よし行くか!」と言ってみんなで円陣を組んだ。
Oさんはなぜかラジカセを持ってきていて、
ライブ開始時に浜田省吾のmoneyという曲を最大ボリュームで流した。
この街のメインストリート僅か数百メートル 寂れた映画館とバーが5、6軒〜
出にくいよ!
大喜利が始まった。
Oさんがハリセンを持って円楽ポジションで仕切っていく。
前半の大喜利部分が終わり打ち合わせ通り俺がNにイチャモンをつけ胸ぐらの掴み合いになった。
Oさんはラジカセのスイッチを入れ中島みゆきのファイトが教室に流れた。
O「俺たちが闘うのはそこじゃないだろ」と仲裁に入った。
そのまま流れるようにエンディング
パラパラ拍手
俺たちが闘うのはどこだったのだろうか
続く