みらいみらい
地球と重力がほぼ同じ惑星に一人で住んでいる主人公がいた。この惑星には彼一人、彼はなぜ自分がこの惑星に一人で住んでいるのか分からなかった。
物心着いた時から住んでいた彼は「寝る」以外の事は知らない。
彼は背中に光を栄養源に変える葉緑体を持っており「光合成」によって栄養を補給するという進化した人間だったのだ。
その事を彼自身は知らないのだが、仰向けに寝るとなぜか次の日調子が悪いという事を小さい頃から肌で感じとっていた彼はうつ伏せで寝る事が当たり前になっていた。
彼は日中はずっとぼーっとしており眠くなったら寝るという生活を20年送っていた。
彼の星には何もなかった。
ただ地面と流星が毎日その惑星に落としていく石があるだけで昆虫すらいない、その地面も硬く覆われていた。
彼は毎夜、寝る前に石を積んでいた。
364個、いよいよ明日は待ちわびた友達との再会だ。
この惑星は公転の関係で365日に一回、隣の惑星と非常に近づくのだ。
隣の惑星にも彼と同じような境遇の人間が一人居たのだ。
ただその星は非常に重力が強く友達はうつ伏せでへばりついてじっとしているだけだったのだが確かに生きていて言葉を発する、彼と友達は一年分の会話を一晩中楽しむというのが毎年の日課になっていた。
わくわくして寝られない彼、彼と去年どんなことを喋ったのか回想していた。
思えば全然喋れなかった彼が言葉を教えてもらったのも友達だった。
明日喋るために口の開け方と発声練習をする彼。
翌朝、彼の惑星が近づいてきた。
しかし彼は友達の姿を見て愕然とする。
友達は仰向けになって虫のように(彼は虫をしらないが)腕と脚を折りまげて死んでいたのだ。
死という概念が理解できない彼は一晩中、友達に喋りかける。
一年その間友達と会えることだけを楽しみにしてきた彼にとって悲劇であった。
一言の会話もないまま惑星また遠ざかる時間が近づいていた。
その時彼は初めて涙を流し「悲しみ」という感情を覚える。
悲しみにいたたまれなくなった彼は隣の惑星に飛び移ろうとするがそこで友達の言葉を思い出し踏みとどまる。
「この星は君の星の三倍の重力がある。だからもし私に何か起こっても絶対に来ちゃだめだ」
彼は次の日からトレーニングに明け暮れる。
次に友達の星で這ってでも動けるように鍛えようとしたのだ。
友達と話すという目標を失ってしまった彼にとって新たな目標を掲げるのは当然の事であった。
そんな彼に訪問者が現れた。訪問者はケイジと名乗った。
ケイジは「お前がやったのか?」と言った。
彼は意味がわからなかったがあれこれケイジと話す内に死の概念を理解しそして隣の惑星の友達は10日前に何者かに殺されたということもわかる。
彼は疑われていたのだ。
ケイジにアリバイの事を聞かれ流星が毎日落としていく石のことを喋る。
ケイジは石を数える。355個だった。ケイジは彼を捕まえようとするが逃げる彼。
彼は犯人は流星だと確信していた。その内に彼は流星の真実を突きとめる。
流星は本当は星ではなく形を変えた人間だったのだ。
流星は彼の星を毎日通り過ぎるときに目を瞑って星になりすましていたという裏づけも彼は取る。
彼はケイジにそれを話し、ケイジも彼を信用する。
ケイジと彼は流星を捕まえようと虫取り網や肩車して軍手で掴むなど荒業を駆使しようやく流星を捕まえる。
洗いざらい自白する流星。
動機は「止まりたかったから止まってる奴を見るとムカムカした。だから殺した」というものだった。
殺害方法は最初友達の惑星で友達の上を通り過ぎる瞬間に油性マジックで友達の葉緑体を塗りつぶすというものだったが、友達が咄嗟に防御しようと仰向けになってそのまま死んだということであった。
流星は殺人未遂の罪で破壊されることになった。
無事に無罪を立証できた彼はケイジに出生の秘密を聞かされる。
彼は捨て子であった。
「これからどうするんだ」と聞かれる彼
その言葉に振り向くことなく走っていって一周して戻ってくる彼。
「友達になってくれないか?」
終わり